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『酷暑対応』ワインセラーって何?6つのポイントで定義します!

今回の記事は、酷暑こくしょ対応」ワインセラーについてです。

ワインセラー売場やwebショップを見ると、販売促進用POPに「酷暑対応ワインセラー」とアピールされていることがあります。ワインセラーの購入を検討しようと店頭に足を運んだ際、『酷暑対応』のPOPを見たら、何となく「真夏でも良く冷えそうなワインセラー」というイメージを抱くのではないでしょうか?

  • 冷却能力が高くて良く冷えそう
  • 暑い夏を乗り切れそうだから安心
  • 高い外気温時でも温度が安定しそう
  • メーカーの技術力を感じるので信頼できそう

「酷暑」は、気象に関わる言葉です。2022年8月に、日本気象協会は、暑さへの関心を高めて熱中症の予防啓発を推進する目的で、『40℃以上』の日を『酷暑日』と定めました。

    引用元:日本気象協会 公式サイト

一方、ワインセラーに「酷暑対応」が唄われていても、それだけで良い商品と判断するのは禁物です。まずは、「酷暑対応」と唄っている理由を確認しましょう。なぜなら、「酷暑対応」ワインセラーについての明確な定義はどこにも存在しないからです。

残念ながら、中には、お客様の実使用に基づいた試験や検査を行わず、前提を曖昧にして「酷暑対応」と唄われていそうな製品も存在しています。このような製品は、期待通りの性能を得られないばかりか、想定以上に電気代が高くついたり、製品の耐久性に問題が出るかもしれません。

この記事では、間違った理解を減らすためにワインセラーのプロが「酷暑対応」ワインセラーを定義すると共に、「さくら製作所としてはどのような考えであるか」をお伝えしています。

「酷暑対応」ワインセラーと言える6つの確認ポイント

「酷暑対応」ワインセラーを定義するとしたら、さくら製作所が考えるものは以下の要件を満たしているものです。このような条件を満たしているワインセラーであれば、大切なワインのことを考えていると言えるでしょう。

    酷暑対応ワインセラー 6つの要件定義

    1. 測定環境:外気温40℃以上
    2. 設定温度:5℃
    3. 庫内負荷:ワインフル収納
    4. 測定箇所:上段から下段 前後列(1段に前後2列収納できるもの)
    5. 液体のプルダウン:20時間~30時間以内
    6. ワイン液体温度のブレ:±1℃未満/day

    明確な定義がない曖昧なものであるからこそ、お客様に誤解を与えないよう実際のご利用シーンを想定して、独自に「酷暑対応」ワインセラーを定義しています。これから、6つの確認ポイントが必要な理由をお伝えしていきます。

    『酷暑対応』ワインセラーを定義する理由

    酷暑のような高外気温で温度性能が保持されるだけでは、「良い製品」とは言えません。だから、総合的な視点でワインセラーを評価することによって、「酷暑対応」ワインセラーを定義し、正しい製品選びに役立てていただくことが狙いです。

    多くのワインセラーでは、法律上の技術基準に合格したことを理由として、「酷暑対応」ワインセラーと呼んでいるようです。

    この技術基準の趣旨は、事業者が「ワインセラー」と名乗って商品を販売するための法律上規格です。上記のポイント①~ポイント⑥のいずれも満たさないので、『酷暑対応』などの特別なワードを冠して販売促進のマーケティングに用いるには不向きで、別に「独自基準」を定める必要があるでしょう。

    ポイント① 外気温40℃以上で測定しているか?

    外気温40℃以上である理由は、日本気象協会が、「酷暑日」を「40℃」と定めているからです。酷暑は、気象に関する言葉なので、ワインセラーのように全く関係のない業界が使うのであれば、混乱を避けるためにも、それに合わせた利用とするのは当然でしょう。

    環境温度40℃で測定するのは、製品の性能の高さをお知らせするためです。製品を快適にご利用いただくための推奨動作環境『5℃~32℃』は、別途定められています。

    使用環境は季節などによって大きく変化するので、さくら製作所では、推奨動作温度を超える使用でも、例外事例を除き、お客様に過失責任は問わないこととしています。


    ポイント② 設定温度 「5℃」であるか?

    たいていのワインセラーは、下限温度「5℃」まで設定できます。これは、白ワインやスパクーリング用では冷蔵保管と したい需要もあるからです。だから、測定温度は「5℃」が妥当でしょう。

    多くのワインセラーでは酷暑対応といっても、測定時の温度が「12℃」だけとなっており、ワインの保管温度すべてをカバーしきれず不十分です。

      「5℃」で測定したほうが良い理由はもう一つあります。具体的には、38℃の高外気温で性能が発揮されるワインセラーよりも、低い温度設定が安定してキープできるワインセラーのほうが、高い性能となりがちなことです。たとえば、外気温38℃、設定12℃として「26℃」冷やすよりも、外気温31℃、設定5℃として「26℃」冷やすほうが難しいと解釈できます。

      理由は、同じ「26℃」冷やしたい場合でも、冷却器の「冷凍温度(最低温度-30℃くらい)」と「外気温」の差が小さくなるほど、冷却スピードが減速してしまうため。この点でも、「酷暑対応ワインセラー」によって高性能を標榜したいのであれば、設定温度「5℃」が適しているでしょう。

      ワインフル収納時のさくら製作所製品の高温度試験結果

      最大周囲温度=N
       ZERO Advanceシリーズは、設定 0℃のとき、N≧33℃ ( 気候クラス:SN-N相当)

      設定温度 12℃はJIS規格による。それ以外の設定温度は自社基準による。ワインフル収納で測定


      シリーズ名
      設定温度
      12℃(法律要件) 5℃ 0℃
      FURNIEL 38℃ 32℃ -
      ZERO CLASS 38℃ 40℃ 32℃
      ZERO Advance 40℃ 40℃ 33℃
      PRO CLASS 32℃ 32℃ -
      氷温M2 43℃ 40℃ 32℃
      ZERO CHILLED 43℃ 40℃ 32℃

      JIS C 9335-2-89:2005 家庭用及びこれに類する電気機器の安全性− 第2-89部:業務用冷凍冷蔵機器の個別要求事項 箇条5.7 箇条6.101 気候クラスの表記より

      ポイント③ 庫内負荷 ワインをフル収納で測定しているか?

      ワインセラーを空の状態で使用することはありませんし、肝心のワインが守られているかもわからないので、ワインをフル収納して測定することが妥当でしょう。

      多くの酷暑対応ワインセラーは、庫内負荷に対して記載がありません。だから、空の状態での測定している場合があります。

      ワインセラーを満タンにした場合、製品の庫内容積に対して、ワインの液体が占める割合は25%くらいです。

      例えば、お部屋のエアコンでコップの水すら冷やせないように、空気で液体を冷却するのは大変な作業です。ワインをフル収納した場合と、全く空の場合では、負荷の差は大きく異なります。ワインで満タンにしてこそ意味があると言えるでしょう。

      水と空気の比熱について 
      水(ワイン)を「1」とした場合、空気は「0.24」。1グラムの物質を1℃上昇させるために必要な熱量の差(比熱)です。小さい数字ほどすぐに冷えます。この数字では4:1の差しかないように見えますが、「空気」の比重は「水」の800分の1程度しかないので、体積当たりで考えると、「水」は「空気」の3000倍以上の熱容量となります。ワインセラーは、冷蔵庫よりも液体の容量が多い冷蔵機器なので、熱容量の大きいワイン収納時にどのような温度状態になるかがより大切な指針となります。
      >比熱について


      ポイント④ 上段から下段まで 前後列を測定しているか?

      正確にワインを温度管理して、美味しく味わいたいのであれば、上段から下段まである程度設定した温度が均一化されるワインセラーが望ましいでしょう。

      多くの酷暑対応ワインセラーで、真ん中あたりの温度しか測定されていないものがあります。 真ん中あたりしか適正な温度になっていないなら、上下段の温度にバラツキがあると言っているようなものなので、適正にワインの保管ができなくなってしまいます。

      アートボード-1
        参照:測定ポイント:JISC9801-1の附属書GのP.48の図

      ワインを収納すると冷気の流れが遮られるので、上から下まで均一に温度管理することが難しくなりますし、さらに、多収納なワインセラーには、前後に収納できるものもあります。後列よりも前列のほうが冷えにくいため、そういうタイプのワインセラーは、前後列の温度も測定して開示することが重要でしょう。

      ポイント⑤ 冷却プルダウンスピードの開示はあるか?

      プルダウンスピードの情報が開示されているか確認しましよう。冷却プルダウンスピードとは、ワインセラーの使い始めから、サイクル運転(定常運転)になるまでの時間です。ワインの劣化リスクを抑えるためとても大切な概念です。

      さくら製作所では、室温28℃程度、室温と同温度のワインをフル収納し、設定5℃でワインセラーがサイクル運転(定常運転)になるまでのプルダウン時間を計測しています。中には冷蔵庫よりも早い時間で5℃までプルダウンする製品もありますが、ワインを熟成する用途であれば、おおよそ30時間以内であれば問題ないでしょう。大型タイプの製品ほど、製品のプルダウン時間は長くかかる一方、ワイン1本あたりの冷却時間は短くなっていきます。

        目安:氷温M2 LX95:外気約28℃ ワイン液体温度28℃ 収納数:95本
        液体温度が5℃までに到達するプルダウン時間:20時間程度

      ワインセラーは、使い始めの常温のワインを大量に投入後した後が一番負荷が高く、放熱温度も上がります。プルダウン時間が長くなりぎると、マイナス温度帯の冷風をワインに当てすぎることによる劣化や、運転時間の長時間化による省エネ性、静音性、耐久性の問題も出やすくなります。

      もう一つ忘れてならないのは、ワインのカーブ(地下蔵)とワインセラーで空気の入れ替わりが異なる点です。カーヴでは室内の短期的に空気がすべて入れ変わることはありませんが、ワインセラーはドアの開閉で、多くの冷気をロスし、新たな暖気が侵入します。このような環境変化の影響を抑える素早い冷却性能も求められています。

      ポイント⑥ 液体温度のブレ ±1℃未満の開示情報はあるか?

      急激な液体温度のブレはワインに大敵であることは周知のとおり。冷却力が高いことに加えて、ワインの液体温度が安定することで熟成環境が保全されていることを示す必要があるでしょう。

      多くの酷暑対応ワインセラーでは、「夏」でも性能を発揮するという点で冷却力の強さにのみ視点が置かれています。しかし、コンプレッサー式だからと言って、冷却性能が高いとは限りません。単に冷却力が高いという説明だけだと、ワインに急激な温度変化を与えるリスクが高まる点が抜けてしまっています。

      液体温度のグラフを見る

      だから、「酷暑でも冷える」というアピールだけでは、急激な温度変化をワインに与える可能性を説明しきれず、本来の熟成を期待できない可能性があるのです。 ワインを熟成させるのであれば、冷却力の高さとワインの液体温度の安定性はセットで考えたほうが良いでしょう。

      技術基準の「気候クラス」をマーケティング利用すべきではない理由

      先述のとおり、「酷暑対応」ワインセラーの多くは、法律の「技術基準」を基にしていることが多くなっています。

      これはあくまでも「製造事業者」が法令順守するためのもので、合格することで、事業者は「ワインセラー」の商品名で販売することができます。だからと言って性能が高いかどうかは全く別の話。

      お客様への販売促進のために定められたものではないので、販売台数増加の目的でマーケティングに利用することは、誤解を与える恐れがあるため避けるべきでしょう。

      目的の違いによって、①と②の両方を満たすことが必要

      測定基準

      目的

      測定温度

      設定温度

      庫内負荷

      測定ポイント

      プルダウンスピード

      液体温度のブレ

      ①技術基準
      (PSE)
      法令順守 38℃ 12℃ ワイン
      なし
      3点
      (JIS)
      該当なし 該当なし
      ②自社規定 販売促進 40℃ 5℃ ワイン
      フル収納
      上段から下段まで 40時間以内 ±1℃未満/h

      たとえば、「気候クラス亜熱帯(ST:38℃)向けに設計されたワインセラーだから酷暑に対応する」との広告表示は、「優良誤認」とみなされる場合があるので当社では行いません。具体的には、気候クラスの表記義務のない「省令1項」を満たした冷蔵機器よりも冷却性能が優れているという印象を消費者に与える恐れがあります。日本国内で製造されているほとんどすべてのワインセラーや、家庭用冷凍冷蔵庫は、省令1項の技術基準に適合しているわけですから、この広告を行うと、「日本で製造したワインセラーやショーケースよりも優れている」というような誤解に繋がってしまう恐れがあるのです。これではお客様が正しい製品を選べなくなってしまいます。

      広告表示をマーケティングに利用する場合には、正確で誤解を招かない表現を使用することが事業者に義務づけられています。お客様にとって有益な情報を提供し、適切なワインセラーを選ぶための判断材料が良い販売促進となるでしょう。

      「厳冬対応」ワインセラーかどうかもチェックしましょう

      ここまでは酷暑対応ワインセラーについての要件を見てみました。忘れてならないのは、対局にある「厳冬対応」ワインセラーについてです。

      マンションなどの集合住宅よりも戸建てのほうが、冬は室温が低くなりやすく、寒冷地や別荘地などでは室内温度が5℃を下回る場合もあります。ワインセラーの「冷やす」性能が高いのであれば、「温める」性能も高くなるので、この2つはセットです。

      ワインセラーにおいて、『冷却性能は高いけど、加温ヒーターはなし』というモデルは、技術的な観点から存在し得ないものです。十分なパワーのある「加温ヒーター」がなければ、冷却性能が優れているとは決して言えないはずなのです。だから、高い「加温機能」があるものを選べば、高い「冷却機能」も兼ね備えていると考えて良いでしょう。

      最低でも室温プラス12℃~14℃程度は加温できる性能を選びましょう。さくら製作所では、改良を重ねた結果、現在は全シリーズ室温+20℃以上を加温できるヒーターを搭載しています。

      ※各シリーズの測定結果
      ※設定温度20℃。
      ※測定条件 外気温0℃
      ※データは参考であり、保証するものではありません。
      ※対象機種:全製品

      『加温ヒーター』の性能確認が必要な理由

      加温ヒーター搭載と言っても、外気温+4℃~5℃程度しか加温できない製品があるので、必ず性能を確認しましょう。この機能を説明すると、「外気温が5℃で、設定15℃にしたくても、セラーの温度を4℃しか上昇させずに、実温9℃での利用に加温機能を制限する」と解釈できます。 しかし、熱エネルギーの特長から考えると、加温ヒーターにこのような機能制限を与える意図はないと考えるのが妥当です。

      なぜなら、冷却性能と違って、加温の場合は熱エネルギーを加えるだけで温度は上がっていきます。10℃から15℃に加温するのと、15℃から20℃に加温するエネルギーにほとんど差がなく、庫内の熱が外に逃げて均衡が保たれるまでぐんぐん温度上昇するからです。

      さくら製作所製品について

      最後に、さくら製作所の製品は、夏でも冬でも一年中安心して使えるワインセラーとして、「酷暑/厳冬」ワインセラーの要件を自社で定義し、いずれの要件でも性能を満たしています。

      他にも、ワインセラーや日本酒セラーは、「PSE適合商品」や「国際基準で検品」など、事業者の義務なので本来は差別化とならないことを販売促進に利用していることがあります。これらは、お客様に不利益な誤解を抱かせることがあるので、今後当社では、お客様に正しい情報提供をすることで、ワインセラーの適切な選び方を伝えていく予定です。

さくら製作所をもっと詳しく知る

さくら製作所は、ワインの美味しさを最大限に引き出せる日本製ワインセラーを販売しています。創業以来ワインの美味しさを追求し続け、独自の技術力で完璧な温度管理と省エネ、省スペースを実現したワインセラーのプロフェッショナル集団です。この記事を見てさくら製作所に興味を持った方は、以下のコンテンツでより詳しく私たちについてご覧いただけます。

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