従来のワインセラーの課題
- 表示温度と庫内の実温度に差が生じやすい
- 庫内に温度差があり、テーブルワインが冷えすぎたり、温かったり
- 意図した温度になっておらず、長期保管にも影響しやすい
氷温®熟成も長期熟成も、過冷却炭酸も作り出せるテクノロジー
氷温®M5シリーズ(以下、「氷温M5」)は、ワイン、日本酒、ビール、それぞれが持つ個性を最大限に引き出すために、セラーとしては最も温度設定範囲が広い(※)、氷温-5℃から25℃まで微細にコントロールします。さまざまな環境を想定し、飲み物のおいしさをキープしたり、引き上げたりする冷蔵機器です。
その秘密は、精密な温度管理アルゴリズム、お酒に応じた湿度コントロール、そして独自開発の高効率冷却技術。これらが組み合わさることで、単なる保存ではなく、味わいをデザインするステージへと進化。“冷やす機械”ではなく、“価値を創るツール”として活用できます。
ワインをどのように熟成させたいか──その鍵を握る最も重要な指標は「温度」です。 自然のカーヴとは違い、機械装置であるワインセラーでは、長期熟成を実現するために、温度を液体そのもののレベルで正確にコントロールすることが欠かせません。 精緻な温度管理さえあれば、一定温度で守る熟成も、意図的に温度変化を与えて育てる熟成も、自由に選び取りながらカーヴのような熟成を実現できます。
氷温M5は、冷気を均一に循環させるバンクショット方式と、緻密に設計されたセンシング技術によって、庫内の空気温度と液体温度を限りなく一致させます。温度ムラやブレを徹底的に排除した環境は、開栓直後に飲み頃温度を求めるレストランのソムリエから、自宅で長期熟成を楽しむ愛好家まで、幅広いニーズに応えます。
長期熟成の質を決めるのは、毎日の温度管理がどこまで精密に制御できるかにあります。外気変化やドア開閉による温度復帰など、セラー内部の温度を短期軸で安定させる技術こそ、セラーの本質的な価値です。
バンクショット方式は「短期を制する者が長期熟成を制する」という逆転の発想から生まれ、まず短期軸におけるワインのふるまいを徹底的に極め、その積み重ねで揺るぎない長期熟成を実現していきます。
ワインセラーの魅力は温度を設定できること。しかし実際には、多くの製品で「表示している温度」と「実際の庫内温度」が一致していません。15本程度の小型モデルでも5℃以上もの差があり、大型製品になるほどさらに顕著となりがちです。 氷温M5は、この課題を解決する独自技術 「バンクショット方式™(特許)」 を搭載。冷気を天板に当てて反射・拡散させることで、庫内全体を均一かつ安定した温度に保ち、表示温度と実温度の差を徹底的に排除しています。
セラーの温度管理で見落とされがちなのが、センシング技術です。温度センサやドアセンサから得た情報をもとに精密な閾値制御を行うことで、ワインの長期熟成、日本酒の鮮度保持、ビールの冷えた味わいまで、1台で幅広い用途に対応できます。
単にコンプレッサーで「冷やす」だけでは、庫内温度を正確にコントロールすることはできません。何百回もの検証を行い、条件の違いや個体差を考慮したうえで、「近すぎず、遠すぎず」という最適な位置に温度センサーを配置。さらに冷却器やドアの開閉状況も監視し、庫内の温度挙動をきめ細かく制御します。これにより、ワインの液体温度を安定させ、理想的な保存環境を実現しています。
氷温M5のGX22・GX38上室・GX50上室は、冷蔵庫の約半分の時間で飲み物を急速冷却できる「スタンドアップボトルクーリングシステム」を搭載。バンクショット方式よりも液体の安定感は若干劣りますが、すばやくパワフルに冷却するので、日本酒や、ビール、飲食店やホテルなどでは最適です。急冷とワイン保管を両立するハイブリッドセラーとして、日常から特別なひとときまで幅広く活躍します。
ワインの長期保管においては、温度だけでなく一定の湿度も必要とされます。湿度が低すぎるとコルクが乾燥して収縮し、空気がボトル内に入り酸化の原因となるためです。逆に湿度が高すぎるとカビやラベルの劣化を招きます。理想とされる60〜70%前後の湿度を安定して保つことが、ワインの品質を守る重要な条件とされています。
氷温M5は、断熱性や気密性を重視した「うるおい密閉式」を採用しています。当社では2017年発売のゼロクラス以降のモデルはすべて「密閉式」としており、外気の影響を抑えて年間を通じて安定した湿度を提供するので、日本の乾燥しやすい時期に、コルクの品質劣化を避けたいワインに理想的な選択となっています。
従来からある湿度維持の方法は、「穴あき方式:加湿循環タイプ」です。穴あき方式は、外気との小さな通気孔を設け、自然換気により湿度を保とうとするシンプルな構造が特長。コストを抑えられますが、外気に大きく左右され、季節や環境によって庫内条件が不安定になりがちです。
穴あき方式は小さな通気孔で庫内と外気をつなぎ、自然の空気循環に頼って湿度を保とうとする仕組みです。しかし、実際には外気の影響を大きく受け、乾燥した外気であれば庫内も乾燥し、多湿であれば湿度も過剰に上がるなど、環境が外気任せになりがちです。 また、通気孔の多くは、放熱があり、空気の対流も起きにくいセラー背面に配置されています。必ずしも「庫内に取り入れたい良い空気」ではないうえ、冷気が逃げるリスクも伴います。こうした課題を避けるためには、外気の影響を受けにくい密閉型構造のワインセラーが適していると言えます。
ワインやシャンパーニュを保管する場合は、冷却器に付着する結露水を巧みに利用し、高湿度を自然発生させる独自サイクルを搭載。表面積の大きい、フィン冷却器に露を付着させて冷気と共にファンで循環させて湿気を運びます。滴下した水はドリップトレイに貯水し、庫内のしっとり感に寄与します。余分な水分はドレンパンで自然蒸発するので、手間なく湿度を維持できます。
一方、日本酒を5℃未満の低温で保管したい場合は、約30〜50%の低湿度をキープ。一本一本の味わいを守る、プロ仕様の湿度環境を提供しています。
セラーは、ドアの開閉によって空気は必ず出入りします。日本では春から秋にかけて外気温・湿度が十分にあるため、湿度に関わる問題は少ないですが、冬になると乾燥し、湿度が下がりやすくなります。この時期に平均50%以上の湿度を維持できれば、年間を通じて安定した環境が実現します。 よくある「水を入れたトレイを置く」方法では加湿効果は得られません。水分は蒸発しなければ湿度は上がらないため、冷気の通り道である「ドリップトレイ」に水をためることが、効果的な加湿につながります。
外気温との差が大きいマイナスの低温領域は、ワインの保管以上にシビアな条件が要求されます。氷温M5では、冷却器の特定ポイントの温度をセンサーで監視し、霜が発生する可能性を検知したときだけ自動的にヒーターを作動させる特許取得済みのスマート霜取り機能、「セラーデフロスト制御™」を搭載。
これにより、0℃以下の低温でも、庫内温度の安定性を維持し、日本酒やビールなどの味わい、鮮度を長期間にわたって守ります。無駄な霜取りを行わないため、省エネ性にも優れています。
氷温M5は、-5℃に設定した際の日本酒ボトル内部の液体温度を、第三者認証機関JETによって厳密な検証で評価しています。これらのデータに基づき、公益社団法人氷温協会から「氷温®機器」として認定を受けた、確かな性能を持つ機器です。 -5℃まで設定できるセラーは存在しても、ボトル内部の温度測定や性能検証まで行い、その裏付けを持つ機器はほとんどありません。 氷温M5は、その点で一歩先を行く信頼性を提供します。
JETでの測定条件と結果
セラーデフロスト制御™は、セラーが自分で冷却器の状態をチェックし、霜が付いたときだけ閾値制御によって霜取運転を行うセンシング技術です。無駄なヒーターによる霜取加熱をしない分だけ庫内温度が上昇せずに安定するので、大切なお酒を鮮度を維持したままキープすることに適しています。
従来の単純な霜取り方式とは一線を画します。複数のセンシング技術を組み合わせ、0℃以下の氷温®で冷やした液体の温度変動を最小限に抑る機能を搭載しているので、 タイマー式の冷蔵機器とは異なり、霜取り中でも液体温度の乱れを防ぎます。この霜取制御技術があるからこそ、繊細な日本酒の品質も長期に渡って維持することができます。
保管温度が低いほど、生酒の香りの劣化要因となる「イソバレルアルデヒド」や「イソバレルアルデヒドジエチルアセタール」の生成が抑えられる検証ことが確認されました。 日本酒はワインよりもさらに、デリケートなお酒。生酒はその中でも特に繊細です。わずか1日程度の常温保存でも品質に影響が出るといわれていますので、氷温管理が可能な日本酒セラーでの保存が安心です。
詳しい実験や検証データに関する記述はこちら
氷温®保管により、液体の中に微細な氷結晶が分散した「アイススラリー」も生成できます。市販のペットボトル飲料を一定時間入れておくだけで、カラダの中から涼しく整える“過冷却飲料”が簡単に作れます。
アイススラリーとは、氷と水が混ざった、飲めるシャーベット状の冷却飲料です。ジュースやスポーツドリンクなど、猛暑日の暑熱対策にも使えます。さらに、酷暑の日に、キンと冷えたビールを氷点下で冷やすと、冷蔵庫では作りづらい過冷却の極上体験を楽しめます。
身近なコンビニやスーパーで手に入る清涼飲料水やビールが、氷温®技術によって“過冷却飲料”へと生まれ変わります。 いつでも手に入る身近な飲み物に“新しい価値”を与える――そんな体験を、ぜひご自宅で。
ペットボトルのスポーツドリンクや、スパークリングウォーター、炭酸ジュースも、過冷却技術によって全体を凍らせることなく、飲める状態でほんのり氷結。 氷を加える必要がなく、冷たさそのものをキープできるため、炭酸の爽快感とシャープな飲み口を存分に楽しめます。
毎年のように訪れる猛暑の夏。暑熱対策の重要性は年々高まっています。 高温環境や脱水、防具装着の作業などで体温調節がうまく働かなくなると、深部体温が上昇しやすくなり、運動能力の低下や熱中症のリスクを招きます。そのため、適切な水分補給は体温上昇を抑え、パフォーマンス維持や健康管理に欠かせません。
そこで注目されているのがアイススラリーです。運動前や休憩時に摂取すれば深部体温をすばやく下げ、運動継続時間を延ばす効果が報告されています。 さらに、競技者だけでなく、屋外スポーツ観戦やレジャー、アウトドアでも活用可能。断熱ボトルにアイススラリーと氷を入れて持参すれば、手軽で効果的な暑熱対策になります。
アルコールが含まれているビールを氷温®で過冷却すると、従来の冷蔵庫では体験しずらい“キンと冴える冷たさ”を楽しめます。 まるで居酒屋で味わうような本格的な氷点下ビールをご家庭でも手軽に、いつでも飲めるようになります。
設定温度と、外部の環境温度の差が大きいとき、セラーには大きな負荷が生じます。しかし、氷温M5は、真夏の35℃を超える酷暑でマイナス5℃~0℃でキープすることも、厳冬で室温が5℃以下となってしまう環境でも、加温して25℃を維持することができます。
冬季にしばらく留守にする別荘や、寒冷地の住宅は加温性能が必須となり、逆に、レストランの厨房やバックヤードでは、人が過ごす空間以上に高温になりがちです。 厳しい環境でも、外気の影響を受けにくく、一年を通じて安定した保管環境を実現できます。
一般的なペルチェ式のワインセラーは、外気温より約12~13℃程度しか冷却できません。さらに、コンプレッサー式で「酷暑対応」と表記されていても、外気温が38℃時の動作保証が、設定15℃程度までとされている製品もあります。一方、氷温M5は違います。 外気温が35℃の環境下でも、庫内温度を-5℃で維持し、最大40℃もの温度差を克服できる冷却性能を備えています。冷却スペックに余力があるからこそ、実際の生活環境では安定した性能を発揮したり、運転時間の短縮による耐久性向上に寄与します。
ワインセラーの設定温度より外気温が低い場合、ヒーターを制御して温度を上げる必要があります。氷温M5は、外気温から最大25℃加温できるヒーターを搭載しています。そのため、冬季に気温が下がりやすい寒冷地や別荘地でも、安心してワインセラーをご利用いただけます。
ワインセラーでは、使い始め、低温使用、外気温など、製品への負荷が高いほど、より多くの熱エネルギーを放出することから、側面が熱く 最大約55℃~60℃程度になります。氷温M5では、放熱経路を見直し、側面コンデンサーの流路を最適化しました。 従来モデルよりも側面の温度上昇を抑制。さらに温度が上がりがちな部分の放熱場所を奥側に変更することで、周囲への影響も軽減しています。
庫内の設定温度を低くすると、一時的に製品の放熱温度は高くなります。これは、まだ冷え切っていないボトルを多く収納した場合や、室温が高い環境で使用している場合に起こりやすい現象です。 しかし、お酒の温度が安定してくると放熱温度も自然に下がります。氷温M5は、コンデンサの改良や冷却流路の再設計、コンプレッサー稼働の最適化により、この放熱温度の上昇を抑える工夫も行っています。