ワインを好きでよく飲むものの、「それぞれのワインの違いがよくわからない」という人も多いのではないでしょうか?
ワインの色や香り、味わいを観察して言葉にするのがテイスティングです。テイスティングは、ソムリエなどのプロだけがやるものではなく、普段の生活でワインを飲む私たちにもできるものです。敷居が高く感じられるかもしれませんが、基本的な知識をもっておけば気軽に始められます。
今回は、知っておけばワインの楽しみが広がる、テイスティングの基本的な方法をお伝えします。
具体的なテイスティング方法を知る前に、ワインのテイスティングには大きく2種類あることを覚えておきましょう。
レストランでワインをボトルで注文した際、グループの主催者(ホスト)がそのワインの品質を確認するためのテイスティングを、ホストテイスティングといいます。
ホストテイスティングは、ソムリエにワインを少量だけ注いでもらい、色や香り、味わいが悪くなっていないかを確認するものです。そのワインが好みの味か、どのような味わいかを見るためのテイスティングではありません。
もうひとつのテイスティングは、飲んだワインの色や香り、味わいを言葉にして評価するものです。
ソムリエなどワイン関連の仕事をしている人は、お客様が好むワインをおすすめできるようにテイスティングを行います。
普段の生活でワインを楽しむ人であれば、ワインの味を記憶しておくため、あるいはワインの味わいを家族や友人と共有するためにテイスティングをします。テイスティングができると、ワインショップやレストランで好みのワインを選べるようになる利点もあります。
今回の記事では、味わいを評価するテイスティングについて詳しくご紹介します。
最低限用意するのは、ワイン、ワインオープナー、ワイングラス、テイスティングシートの4つです。
テイスティングしたいワインを用意します。ワインは多くの種類があるので、まずは自分が気になる品種や産地、エチケット(ワインのラベル)のデザインで選ぶのもいいでしょう。
ワインのコルクを抜くオープナーも必要です。レストランで、ソムリエがソムリエナイフを使ってコルクを抜くのを見たことがあるかもしれませんが、自分が楽しむためにテイスティングをするのであれば、使いやすいオープナーでOKです。
ワインの香りや味わいの感じ方は、グラスの形によって変わります。そのため、複数のワインをテイスティングするときは、比較しやすいよう同じ形のグラスを使うことをおすすめします。どのグラスを使うか迷ったら、国際規格のテイスティンググラスを1つ用意してもいいでしょう。
テイスティングでチェックする項目と記入欄を表にしたものを、テイスティングシートといいます。はじめはインターネットなどで共有されているものや、他の人のテイスティングシートを参考にして用意し、少しずつ自分のオリジナルシートにしていくのもおすすめです。
記入したテイスティングシートは、ワインの産地や品種別に保管しておくと後から見返しやすく、便利です。また、テイスティング結果を記録するモバイルアプリもあるので、デジタルで記録したい人は使ってみてください。
次に、基本的なテイスティングに慣れてきたら、用意すると便利な道具をご紹介します。
ワインを移すガラス製の容器を、デキャンタといいます。ワインをデキャンタに移して空気に触れさせることで、香りや味が良くなったり、澱(オリ)を取り除けたりする効果があります。
注ぐ際にこぼれたワインや、グラスを拭くときにナプキンがあると便利です。
口をすすいだり、喉を潤したりするために、水を用意しておくといいでしょう。水の臭いでテイスティングに影響が出ないよう、ミネラルウォーターが望ましいです。
口の中に残る味を中和するために、クラッカーを食べることもあります。水と同じく、クラッカーの味がテイスティングに影響しないよう、塩気や香りがないものがベストです。
ワインのテイスティングは、「外観を見る」「香りを嗅ぐ」「味わいを確かめる」という3つのポイントがあります。
明るい場所で、ワイングラスの脚を持って、自分と反対向きにグラスを45度傾けてフチを見てみましょう。見るポイントは「濃淡」「色調」「粘度」の3つです。ワインはこうした外観によって、香りと味わいがおおよそ決まります。
まず、ワインの色の濃さを見て「淡い・やや淡い・中程度・やや濃い・濃い」の5段階で評価します。ワインは、産地が温暖なほど、あるいは熟成しているほど色が濃くなります。
色調の評価は、白ワインと赤ワインで異なります。白ワインであれば、淡いワインは緑がかったイエロー、濃いワインは黄金がかったイエローになります。赤ワインは、淡いワインはオレンジがかった色調、濃いワインほど紫がかった色調です。
粘度は、グラスを傾けて内側に残る液体の流れ方を見ます。「さらっとした・やや軽い・やや強い・強い」の4段階で評価してみましょう。
次に、ワインの香りを2回確認します。最初にグラスを揺らさずに感じられる「第一香」を2〜3秒だけ嗅ぎ、次にスワリング(グラスを回すこと)をして変化した「第二香」を確認しましょう。スワリングをすると、ワインと空気が触れてさらなる香りが引き出されるので、より多くの香りが感じられます。
ワインはいくつもの香りが複雑に混ざり合っており、大きく以下の3つに分けられます。
第一香では第一アロマを中心に感じられ、スワリングして嗅ぐ第二香では第二アロマや第三アロマも出てくるようになります。こうして感じられた香りを、フルーツや花、植物、スパイスなどに例えて表現してみてください。
複数のワインの味わいをみるときは、同じ量、同じ時間だけ口にすることがポイントです。目安として、15mlのワインを5秒以上口に含んでみてください。その際、空気も吸い込みながら飲むと香りをより感じやすくなります。
ワインの味わいは、以下の①〜⑥の順番でとらえていきます。テイスティングに慣れるまではこの6つの要素をすべてとらえるのは難しいので、一つずつ味わいをみていくことをおすすめします。
①アタック(第一印象)
②甘味
③渋み・苦味
④酸味
⑤ボディ(アルコール、渋み、酸味の凝縮感)
⑥余韻
ここまで、外観・香り・味わいについて基本的な知識をお伝えしましたが、まずは感じたままを言葉にしてみてください。ワインの表現に唯一絶対の正解はないので、言葉での表現に慣れることから始めるのがおすすめです。
ワインは「見た目」「香り」「味わい」でそれぞれ表現する言葉があります。よく使われる用語をご紹介します。
色調や輝きを表現するときは、以下のような言葉が使われます。赤ワインの色調は、宝石やフルーツに例えることもあるのが特徴です。
白ワイン | 赤ワイン | |
色調 | 「クリアな」「緑がかった」「レモンイエロー」「黄金色」「褐色」 | 「紫がかった」「オレンジがかった」「レンガ色」「褐色」「ブラックチェリー」「ラズベリー」「ガーネット」「ルビー」 |
輝き | 「輝きのある」「落ち着いた」「モヤがかった」 | 「輝きのある」「艶のある」「モヤがかった」 |
フルーツや花、食品、お菓子、動物など、多様な表現があります。その中でもフルーツの香りは、ブドウの産地やワインの熟成度が推測できる大切な香りです。
フルーツ
白ワイン | 赤ワイン | |
・涼しい地域のブドウ ・熟成が進んでいないワイン | 柑橘系フルーツの香り (レモン、グレープフルーツなど) | 酸味があるフルーツの香り (いちご、ラズベリーなど) |
・温暖な地域のブドウ ・熟成度が高いワイン | 甘いフルーツの香り (マンゴー、パイナップルなど) | 黒色がかったフルーツの香り (ブラックチェリー、プラムなど) |
花
バラ・ユリ・芍薬・かすみ草・ジャスミンなど
食品・お菓子
バター・黒胡椒・チョコレート・バニラ・ビスケット・カスタードクリームなど
動物
ジャコウネコ・ジビエなど
その他
落ち葉・なめし革・チョーク・貝がらなど
味わいをとらえるポイントごとに、よく使われる表現があります。
①アタック
ワインを口に含んだ時の第一印象を表現する言葉として、「強い」「弱い」「インパクトのある」「さらさら」「ねっとり」などがあります。
②甘味
ワインの甘味と果実味の強弱を「極甘口」「甘口」「中甘口」「中辛口」「辛口」「極辛口」のいずれかで表します。また、甘味を表す言葉の代表例は、「ソフトな」「ねっとりとした」「まろやかな」「豊かな」などです。
③渋み・苦味
渋みは「穏やかなタンニン」「シルクのような」「刺すような」などと表現することが多いです。苦味はミネラルの有無で強弱を表しましょう。
④酸味
「酸が高い」「フレッシュな酸」「シャープな酸」「丸みのある酸」といった言葉で、酸味の強弱や質を表現します。
⑤ボディ
ワインのアルコール感やコク、タンニンの量などによって、「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」の大きく3種類に分けられます。
フルボディ | アルコール感が強く、渋みや酸味がしっかりあるワイン |
ミディアムボディ | フルボディとライトボディの中間の味わいのワイン |
ライトボディ | アルコール感が低く、渋みや酸味が穏やかな味わいのワイン |
⑥余韻
「永遠に続くかのような余韻」「複雑な余韻」「さわやかな余韻」といった言葉が、ワインの美味しさの持続を示す表現です。
ワインには、これまで紹介した他にも面白い表現がまだまだあります。
また、不快な香りに対しては特に独特の表現方法があります。
こうした珍しい表現も知っておくと、表現の幅が広がってテイスティングをより楽しめるようになるでしょう。
ワインのテイスティングは難しく感じるかもしれませんが、基礎知識をおさえるとチャレンジしやすいと思います。
はじめは肩肘張らずに、気軽にいろいろなワインを飲んでみることが大切です。その中で、好きだと思ったワインについて、今回の記事を参考に言葉で表現してみてください。
事業再構築