ワインが好きでよく飲んでいるものの、赤ワインと白ワインの違いがよくわからなかったり、造り方を知らなかったりする人は多いのではないでしょうか。
ワインはぶどうを原料とするお酒で、種類によって製造方法が少しずつ異なり、多くの工程を経てできあがります。
今回は、ワインの種類ごとの造り方や味わいの違い、相性のよい料理をご紹介します。いろいろなワインをもっと楽しむために、この記事の内容をぜひ役立ててください。
ワインはぶどうを発酵させて造るお酒です。ワイン用のぶどうは食用とは違う品種で、小粒で果皮が厚いという特徴があります。赤ワインと白ワインでは使われるぶどうの品種が異なり、品種によってワインの味は大きく変わります。
赤ワインによく使われるのは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールなどの黒ぶどうです。一方、白ワインには、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースニングなどの白ぶどうが多く使われます。
詳しくは、SAKE TALK「ワイン選びはぶどうの品種から!初心者がまず覚えたいワインぶどうの特徴」で説明しているので、ぜひご覧ください。
それでは、赤ワインと白ワインの基本的な造り方をご紹介します。

①収穫
赤ワインに使われるのは、主に黒ぶどうです。毎年9〜10月頃に、ぶどうの収穫時期を迎えます。

②除梗・破砕
まず、ぶどうの果梗(ヘタや柄)を取り除いて果実部分だけにします。この除梗によって、強い渋味や苦味が取り除かれます。
次に、果皮が破れる程度にぶどうを潰す破砕をして、酸化防止と殺菌のために二酸化硫黄(亜硫酸もしくはSO2ともいう)を加えます。亜硫酸には菌を増殖させない静菌効果があります。
③主発酵・醸し
次に、除梗・破砕したぶどうをタンクや木桶に入れて酵母を加え、およそ30℃で発酵させます。ワインの発酵に使われる酵母には、自然に存在する天然酵母、もしくは培養された培養酵母があります。酵母によって、糖分がエタノール(アルコール)と二酸化炭素に分解されることをアルコール発酵と言います。
そして、ぶどうの果皮や果肉、種子を果醪(かもろみ:ぶどうの果汁・果皮・果肉・種子の混合物)に漬け込んで成分を抽出します。これを醸しと言います。この工程によって、果皮からの赤い色素成分であるアントシアニンと、種子からの渋味成分であるタンニンが抽出されます。この渋味の強さや性質によって味が変わるので、赤ワインにとって渋味は大切な要素です。

④圧搾
圧搾機にかけ、果皮や種子を取り除き、液体だけを残します。
液体をタンクの下部から圧力をかけずに自重で引き抜くワインをフリーラン・ワイン、果皮・種子をプレスして液体を取り出すワインをプレス・ワインと呼びます。一般的には、フリーラン・ワインが上質と言われています。また、フリーラン・ワインにプレス・ワインを少しだけ加えてタンニンを補う方法もあります。
⑤MLF(マロラクティック発酵)
ぶどう果汁やワインに含まれるリンゴ酸が、乳酸菌の働きによって乳酸と炭酸ガスに分解されます。この発酵を、MLF(マロラクティック発酵)と言います。
マロラクティック発酵によって、酸味が和らぎマイルドな味わいになり、豊潤な香りが造られます。また、微生物に食べられやすい性質をもつリンゴ酸が、微生物に食べられにくい乳酸に変わることで雑菌が発生しにくくなり、ワインがより安定して熟成できるようになる効果もあるのです。
⑥熟成・滓(おり)引き
発酵後のワインは、樽またはタンクに移し替えられセラーやカーヴ(ワイン貯蔵庫)で1年〜2年ほど貯蔵され、味わいを整えていきます。
樽で熟成されたワインは、樽材からもタンニン成分が溶け出すため、ワインがまろやかになります。なお、樽からワインが蒸発して目減りするため、定期的に捕酒(ウィヤージュ)を行い、樽の口元まで満タンにする作業があります。
近年は、ワインを熟成する主流はステンレスタンクになっています。熱伝導性がよく温度管理をしやすい、殺菌しやすく衛生面で管理しやすい、ワインの酸によって腐食しにくい、といったメリットがあるためです。
発酵したワインはさまざまな成分によって濁り、樽やタンクの底に沈殿します。この沈殿物を滓(おり)と言い、ワインの上澄みだけを他の容器に移し替えて滓と分ける滓引きが定期的に行われます。

⑦清澄(安定化処理)・濾過
滓引きをした後も、ワインをさらに澄んだ状態にするために、ベントナイト(粘土)や卵白などを使って濁りを取る滓下げを行います。さらに取り切れなかった濁りや酵母などを取り除くために、フィルターに通して濾過を行う場合もあります。
そして、瓶詰め後に大量に酒石(ワインに溶け込んだ成分が結晶となって現れたもの)が出ないよう、ワインを-4℃〜0℃の低温で数週間保持します。
⑧瓶詰め
最後にワインを瓶詰めし、コルクやスクリューキャップなどで栓をしてできあがりです。ワインは瓶詰めした後も熟成が進み、時とともに味わいが変わっていきます。

白ワインの製造方法には、赤ワインと異なる点がいくつかあります。ここでは、代表的な違いについてご紹介します。
・発酵に入る前に果汁だけを取り出す
赤ワインは皮や種子も一緒に発酵させて果皮から色素を引き出しますが、白ワインは発酵の前に圧搾し、果汁だけを取り出すことが大きな違いです。つまり、白ワインで発酵させるのは、果汁のみとなります。また、発酵前に果皮と種子を取り除くため、醸しは行われません。
そのため、白ワインには渋味が含まれず、主に甘味と酸味で味が成り立っています。
・発酵温度は赤ワインより低い
白ワインの発酵温度は赤ワインよりも低い15〜20℃です。そうすることで白ワインのフレッシュさが失われることを防いでいます。
・マロラクティック発酵をするのは一部の白ワインのみ
ほぼ全ての赤ワインで行われるマロラクティック発酵は、白ワインではシャルドネ品種のワインなど、一部でのみ行われます。マロラクティック発酵をしないことで、白ワイン独特の酸味や果実感を強く感じられる味わいになります。

発泡性のあるワインが、スパークリングワインです。赤ワインや白ワインの造り方と大きく違うのは、発酵を二回行うことです。
いくつかあるスパークリングワインの造り方のうちシャンパーニュ方式では、一次発酵でアルコールをつくり、糖分と酵母を加えて瓶詰めした後、二次発酵で酵母のはたらきによって泡をつくります。

ロゼワインの特徴は、ピンク色であることです。「ロゼ」はフランス語で「バラ色」の意味をもちます。ロゼワインは、大きく4つの造り方があります。
①セニエ法
赤ワインと同様に黒ぶどうを除梗・破砕して果醪をタンクに入れ、醸しの途中で圧搾して皮と種子を取り除く方法です。セニエ法で造られたロゼワインは果皮と果汁が接する時間が長いため、酸味がやや低く果実感がある、濃いめの味わいに仕上がるのが特徴です。
②直接圧搾法
黒ぶどうを原料にして、白ワインと同じ方法で造ります。この方法で造られたロゼワインはセニエ法と違い、薄く酸のあるものが多くあります。
③ブレンド法
白ワインに赤ワインを混ぜる方法です。EU(欧州連合)では、フランスのシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインを除き、ブレンド法は禁止とされています。
④混醸法
黒ぶどうと白ぶどうの両方を混ぜた状態で、赤ワインと同じ方法で造る方法です。

オレンジワインは、その名の通りオレンジ色をしたワインです。以下3つの条件が当てはまるワインが、オレンジワインと呼ばれます。
①白ぶどう、もしくは果皮が薄い紫色の品種であるグリぶどうを原料とする
②マセラシオン(醸し)を行う
③天然酵母を使う
オレンジワインは、白ぶどうやグリぶどうを使い、赤ワインと同じ方法で造られます。ぶどうの皮や種子を取り除かずに醸造するので、果皮の色や香りも抽出されるのです。
近年、オレンジワインは世界中で人気が高まっています。その理由には、相性のよい料理が多いことや、自然派ワインブームが高まっていることが挙げられます。
オレンジワインはぶどうの果皮や種も一緒に漬け込んで作るので、赤ワインと同様、強い抗酸化作用を持つタンニンが含まれます。そのため、添加物である二酸化硫黄の添加量を抑えられる、もしくは無くせるので、自然派ワインとして注目が集まるようになりました。
ただし、オレンジワイン=自然派ワインではないため、話題がやや先行してしまっていると言えるかもしれません。
せっかくワインを楽しむなら、ワインの味を引き立てる料理も用意してみてはいかがでしょうか。ワインの特徴に合わせて相性のよい料理を組み合わせることを「ペアリング」、組み合わせによる味わいを「マリアージュ」と言います。
赤ワインの特徴は、黒ぶどうの種子から引き出されるタンニンによる渋味です。味の強い料理と合わせると、渋味がよりおいしく味わえます。
その代表格は、牛や鴨などの赤身肉を使った料理です。赤ワインで口の中の脂がリセットできる効果もあります。また、以下のような料理や食べ物とペアリングしてもおいしく味わえます。

白ワインは果汁だけを発酵させて造られるので、すっきりとした香りやフレッシュな酸味が楽しめます。以下のような塩味が効いた料理や、あっさりした味付けの料理と好相性です。

濃厚な香りがしながらも、フルーティーでさわやかな味わいを楽しめるのがスパークリングワインの特徴です。ミネラルを感じるので魚介系の料理と相性がよく、揚げ物と合わせてもスパークリングワインの炭酸で口の中をスッキリさせられます。

ロゼワインは、タンニンが少し溶け込んでいるので、さわやかな果実味を感じながらも白ワインより複雑な味がします。ピンク色の見た目から甘いワインというイメージをもつことが多くありますが、ほとんどのロゼワインは辛口です。
肉料理から魚料理まで幅広い料理に合うので、ホームパーティーなどで用意するワインに迷ったら、ロゼワインが1本あるとよいでしょう。また、お寿司は赤身魚や白身魚、貝類などいろいろな魚介類を使うので、ロゼワインがあると安心です。
また、甘口のロゼワインは、食後のデザートと合わせるのがおすすめです。

タンニンや果実味、酸味、ミネラル感など複雑な味わいが楽しめるのがオレンジワインです。ロゼワインと同じく、幅広い料理に合わせることができます。
インド料理や韓国料理など、ワインとは相性がよくないとされているスパイスが効いた料理とも合わせられるので、万能ワインといえるでしょう。

この記事では、ワインの種類ごとの造り方や、相性のよい料理を紹介しました。製造方法やペアリングの基本を知ると、ワインの味わい方が広がります。できあがるまでの過程を想像しながらワインを味わえば、ワイン通への第一歩。ぜひ、さまざまな種類のワインや、ペアリングを楽しんでください。
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