関友美が選ぶ初心者におすすめの日本酒5選

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SAKE TALK 編集部

「日本酒にチャレンジしてみたいけれど、たくさんありすぎてどれを選べばいいのかわからない…」

スーパーや酒店の棚にたくさん並ぶ日本酒を見て、日本酒初心者さんの多くがそう思ったことがあるのでは?そんな時こそ、日本酒好きな人に聞いてみましょう。この連載では、お酒に詳しい方々のおすすめする日本酒を紹介していきます。

今回は、日本酒ライター・コラムニストとして執筆活動をしながら、酒蔵・山陽盃酒造の広報としても活動されている関友美さんが登場。5種の日本酒を紹介していただきます。

今回、おすすめの日本酒を教えてくれるのは

関 友美 
日本酒ライター/コラムニスト/唎酒師/シードルマスター/山陽盃酒造 広報企画

会社員、飲食店勤務を経て、日本酒ライターへと転身。現在は雑誌やウェブメディア向けに記事を執筆。また、兵庫県の酒蔵スタッフ兼コンサルタントとして酒造に携わり、日本酒だけでなく、地域を背負ったシードルを立ち上げ商品開発も担当。全国を飛び回り、お酒の美味しさと各地の歴史や文化の豊かさを日々伝え続ける。趣味は城・城跡めぐり。北海道出身。兵庫と東京の二拠点暮らし。

関さんが考える日本酒の魅力とは?

日本酒は、日本そのもの。稲作の信仰(※)からなる米への敬意と感謝が詰まっていて、ハレもケも活躍する生活に密着したお酒です。神様に捧げたものを無礼講で楽しむ、という文化のなごりから、世代や立場を超えて平等に楽しめる貴重な「場」として機能しています。世界一難しいといわれる醸造方法を生み、紡いできた精神性は日本人ならでは。わたしは、そんな日本酒が大好きです。日本酒はわたしの人生そのものです。

※稲作信仰:古代から続く稲には強い生命力や霊力があり、悪霊などを鎮める力があると信じる信仰。そんな米を使って作られたお酒は、祭りなどでも用いられ神聖な飲み物とされてきた。

関さんが初心者におすすめしたい日本酒とは?

①飛露喜 特別純米 無濾過 生原酒

特定名称:特別純米酒
原料米:山田・五百万石
精米歩合:50%・55%
アルコール度数:17.6度
製造元:株式会社廣木酒造本店 
公式ページ:なし

Q:この商品との思い出は?

初めて飲んだのは上京してほどなくのことでした。偶然にも酒席を共にした方から「なかなか手に入らずメニューにも載っていない酒だが、私が言えばお店は出してくれるから」と前置きされて、飲んだのが「飛露喜」です。まだ日本酒のいろはも知らない20代前半の当時でも「今まで飲んだ日本酒と全く違う。飲みやすくおいしいなぁ」と感じ、「日本酒にもプレミア品があるのか」と知りました。

その後、食とお酒のジャーナリスト・山同敦子さん著の書籍『愛と情熱の日本酒 魂をゆさぶる造り酒屋たち』を読み、「飛露喜」の「おいしい」の裏側にある膨大な情熱と努力に触れ、特別な存在になりました。永遠の憧れです。

Q:味わいの特徴は?

香りはほんのりとバナナやメロンなど、甘い果実を連想させるフルーティさ。とろみのある舌触りで、やや甘いのにまるで波が引くようにサーっと消えてゆくので、「もうひと口」と飲みたくなる魅惑的なお酒です。日本酒の知識がなくても、日本酒を飲むのが初めての人でも飲めば「あ!おいしい」と、誰でも直感的に感じられる素晴らしい味わいです。

Q:どんな時に飲みたいお酒?

お酒単体でも、お食事と一緒でもおいしい、どんな時でも飲みたいお酒です。
以前取材で蔵元の廣木さんにお会いして、ますます大好きになりました。有名銘柄になっても偉ぶらず、紳士で常に学び続ける素敵な蔵元さんです。だから、「お前はまだまだだぞ」と自分を戒めたい時にも飲んでいます。

②田酒 特別純米

特定名称:特別純米酒
原料米:華吹雪
精米歩合:55%
アルコール度数:15.5度
製造元:西田酒造店
公式ページ:なし

Q:この商品との思い出は?

日本酒好きなら一度は飲んでみたいと恋焦がれるけれど、なかなか自宅用には手に入らない幻の銘柄「田酒」。有名銘柄のひとつとして知ってはいましたが、取材で蔵元の西田社長にお会いして、さらに惹かれました。好奇心旺盛で、常に時代に合わせてお酒を進化させていく姿勢に心打たれました。西田社長は率直な物言いで、私に業界や人生について教えてくれた恩師でもあります。青森県や業界をけん引するリーダー的存在の蔵元さんが作るお酒です。

Q:味わいの特徴は?

米と米麹だけでつくった特別純米酒で、田から成るお酒という意味で「田酒」と名付けられたブランドの定番商品です。

香りがちょっぴり華やかで、味わいは旨味がありながら軽やか。そこまで余韻は長くなく、キレの良さも持ち合わせています。バランスが良く、場面を選ばず万能な味わい。いつでも家にあると嬉しい1本です。日本酒らしいしっかりとした旨味はありながらもフルーティ。温度も選ばないので、初心者にも玄人にも嬉しい味わいです。

Q:どんな時に飲みたいお酒?

特別な日、というよりは日常的に飲みたいお酒。仕事が終わって、冷蔵庫に「田酒」があればハッピーだし、食事と合わせるのもOK。常温でもおいしいから、食後だって単体でも楽しめます。長時間このお酒だけを飲んでも、決して飲み飽きたり飲み疲れしない、優秀なお酒です。現在はかつてより生産量も増えているので比較的入手しやすく、中でも「特別純米酒」はリーズナブルな通年商品なので、他の特別な「田酒」に比べて購入しやすいのもおすすめのポイントです。

③播州一献(ばんしゅういっこん) 超辛 純米吟醸

特定名称:純米吟醸
原料米:特A地区播州吉川産山田錦
精米歩合:55%
アルコール度数:16度
製造元:山陽盃酒造株式会社
公式ページ:http://www.sanyouhai.com/product/banshuikkon-chokara-junmaiginjo/

Q:この商品との思い出は?

わたしが働いている酒蔵のお酒です。「播州一献」は、まだ伸びしろがあるけれど、「この酒の未来が見たい」と味わいに惚れ込みました。

州一献 超辛 純米」というお酒が定番で、「純米吟醸」は同シリーズの新商品です。酸味が穏やかで白ワインのように、料理を引き立ててくれます。じわじわと愛着が湧いてきて、手放せない1本になりました。

Q:味わいの特徴は?

すっきりした柑橘系の香りが特徴的。ルビーグレープフルーツのような苦味と甘味を感じ、「超辛」という名の通り、スパッとキレの良い味わいです。シャルドネを使った白ワインのように凝縮した旨みと爽やかなフルーティさはとても上品で、初心者からワインのプロまで幅広く好まれる味わいです。

Q:どんな時に飲みたいお酒?

いつでも、どんな料理とも合わせられるお酒ですが、特にトマトやチーズを使ったイタリアンテイストの料理や、私の愛する生牡蠣とよく合います。

イタリアンも生牡蠣も辛口のお酒なら何でも合いそうですが、実は案外ぶつかり合って生臭さを引き出してしまいます。それに対し、「播州一献」はほろ苦さがフックとなるのか、安心して合わせられます…。というか、合わせると「君はこんなポテンシャルを持っていたのか」と感動します。パセリやバジル、ルッコラ、ローズマリーなどのハーブ類とも相性抜群!

④瑞穂 黒松剣菱(みずほ くろまつけんびし)

特定名称:なし
原料米:山田錦(兵庫県特A地区産)、愛山(兵庫県産剣菱特別契約米)
精米歩合:毎年お米に合わせて変動
アルコール度数:17度
製造元:剣菱酒造株式会社
公式ページ:https://www.kenbishi.co.jp/product/sake4/

Q:この商品との思い出は?

熟成酒や古酒はちょっと苦手、という意識を変えてくれたお酒です。必ず熟成させ、ブレンドして出荷される「剣菱」。なかでもこの「瑞穂」は、2年以上熟成させたお酒のみがブレンドされています。

「日本酒は熟成させると角がとれて丸くなり、甘さが程よくなって、豪華な余韻が楽しめる」と、頭ではなく舌で実感できた貴重な出合いでした。

Q:味わいの特徴は?

熟成酒ならではの、やや重たく沈んだカラメルのような甘い香り。アーモンドやピスタチオなどナッツのようなほのかな香ばしい味わいが、口いっぱいに広がります。そのまま、さらにふくよかなカカオのような香りとなって鼻を通り抜け、余韻が長く続きます。

Q:どんな時に飲みたいお酒?

グラタンなどチーズを使った料理にぴったり。山羊のチーズやブルーチーズなどクセが強いものでも、難なくペアリングできますよ。チョコレートなどスイーツともよく合います。「これも日本酒なの?!」と意外性を伴った素晴らしい体験ができるので、初心者の方にこそ試していただきたい1本です。

⑤純米吟醸 雪ふるる

特定名称:純米吟醸
原料米:美山錦
精米歩合:55%
アルコール度数:15~16度
製造元:日本清酒株式会社
販売元:リカーズかめはた株式会社
公式ページ:https://www.kamehata.co.jp/pb.html

Q:この商品との思い出は?

私は21歳で北海道から東京に上京したのですが、上京した年の年末に飲んだ思い出の地酒が「雪ふるる」です。お金がなくて、航空券が倍の値段になる年末年始に帰省できず1人ぼっちで過ごす私のために、札幌の母が贈ってくれました。

母は夫婦で「ほり米」という割烹料理店を営んでいるので、日本酒にとても詳しく、選択肢は多数あったはずです。でも、以前私がこのお酒を「好き」と言ったことを覚えていてくれて、札幌でしか買えないこのお酒を贈ってくれたのです。その気持ちが嬉しくて、全国の日本酒に触れた今でも特別なお酒のひとつに数えています。

Q:味わいの特徴は?

綺麗な吟醸香(※)があり、口の中で可愛らしい甘味とちょっぴり華やかな味わいが広がります。なめらかな舌触りで、米の旨みも感じられ、おだやかに最後まで吟醸香を感じられます。

Q:どんな時に飲みたいお酒?

1杯目の乾杯酒でも、食事の途中でも。あまり悩まず、シーンを選ばずに飲むことができます。ふんわりと柔らかな吟醸香は、丁寧に仕込まれた日本酒だからこそ存在するとても安らぐ香りです。日本酒を初めて飲む方でも、きっと気に入っていただけると思います。

※日本酒のフルーツや花のような華やかな香りのこと。

まとめ

日本酒好きならだれもが憧れる人気の銘柄から、地域限定のレアな日本酒まで紹介していただきました。日本酒はそのまま飲むのはもちろんのこと、食べ物とのペアリングでさらにその魅力が感じられる飲み物でもあります。今回教えてもらったお酒の中には、一見難しそうな洋食やスイーツに合うお酒も。少しずつ、日本酒に慣れてきたら、ぜひ色々な組み合わせで楽しんでみてください。

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