これであなたもクラフトビール通!歴史から選び方まで徹底解説

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SAKE TALK 編集部

家庭でお手軽に楽しめるお酒の代表と言えばビールを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、近年では若者のお酒離れが進み、ビールの売り上げは20年連続で減少傾向にあります。

そんな中、急速に売り上げを伸ばしているのが「クラフトビール」です。醸造所やクラフトビールを楽しめる専門店なども増え、コンビニやスーパーでも多種多様なクラフトビールにお目にかかることができます。

しかし「クラフトビールと普通のビールってどう違うの?」「種類が多すぎて選び方がわからない」と感じている人も多いのではないでしょうか?この記事では、クラフトビールの歴史から特徴、味わいの違いまで、知るともっと楽しくなる「クラフトビールの世界」をご紹介します。

そもそもクラフトビールとは?

クラフトビールとはアメリカ発祥のお酒で、「小規模な醸造所が造る個性的なビール」のことを指します。クラフトビールの定義はアメリカの協会であるBrewers Association(BA)により、以下3つに定められています。

  • 醸造所が小規模であること
  • 独立していること
  • 醸造免許を取得していること

クラフト(craft)は「技術」「工芸」「職人技」などを意味する言葉です。工業製品化されたビールとは異なり、小さな醸造所で職人によって丹精込めて造られた、まさに「造り手のこだわりがダイレクトに感じられるお酒」なのです。

一般的なビールとの違い

一般的なビールとクラフトビールの違いは製造方法と販売方法にあります。一般的なビールは、大規模な商業醸造所で製造されます。製造工程は自動化され大量生産が可能なので、比較的低価格で販売されているのが特徴です。

一方クラフトビールは、独立した小規模な醸造所で製造されます。個性的な香りや味わいの商品が多く、比較的高価格で販売されます。パッケージやラベルにまでこだわったものが多いのも特徴です。

地ビールとの違い

クラフトビールとよく混同されるものに「地ビール」があります。地ビールは小規模醸造所で造られる独自のビールのことを指し、クラフトビールとほぼ同じ意味合いを持ちます。似た意味を持ちながら名称が異なる理由には、日本のクラフトビールの歴史が深く関係しています。歴史についてはこの後の章で詳しくご紹介します。

クラフトビールの歴史

クラフトビールの誕生

アメリカでは、古くから各地域ごとに小規模な醸造所が多く存在していました。しかし1920年に試行された禁酒法により、お酒の製造・販売が禁止され、醸造所は次々廃業に追い込まれます。1933年に禁酒法は廃止されますが、醸造所の立ち上げには多くの資金が必要であることから、数十年間は大手ビールメーカーが市場を独占していました。

1970年代になると「大量生産されたビールよりも、より多様なビールを飲みたい」という声が大きくなります。その声を受けて、禁酒法以前の伝統的な味わいを再現するマイクロブルワリー(※1)が誕生。1970年代後半には、自前でビールを醸造して販売提供できる自家醸造が合法化され、醸造所は急激に増えました。

現在、クラフトビールの人気は世界中に広がり続け、今後世界のクラフトビール市場は2023年の59.8億リットルから、2028年には92.0億リットルにまで増える(※2)と予想されています。

※1 小規模でビールを生産する醸造所のこと
※2 Mordor Intelligence 「クラフトビール市場規模・シェア分析‐成長動向と予測(2023年~2028年)」

日本の「地ビール」から「クラフトビール」への変遷

日本のクラフトビールの始まりは、1994年の酒税法改正にまで遡ります。法改正により、ビールの年間最低製造数量は2,000キロリットルから60キロリットルに引き下がり、大手ビールメーカーのような醸造設備や資本力がなくとも、手軽にビール造りができるようになりました

その後、全国各地に小規模な醸造所がオープンし、「地ビール」と呼ばれる少量生産のビールが人気を集めます。地名や土地柄を全面に押し出した「お土産用ビール」「観光ビール」としてその名が全国に浸透していきました。

一時期は、醸造所数が300を超えるほどまで市場が拡大しましたが、1999年ごろをピークにブームは衰退し、醸造所数も200にまで減少します。原因はさまざまですが、高価格であること、知識のない醸造家の参入により「地ビールは品質が安定せずおいしくない」というイメージがついたことなどが考えられます。

その後、2012年ごろにアメリカでクラフトビールが空前のブームになりました。その影響を受け、日本でも再び醸造所が増加し始めます。クラフトビールと似たような特性を持つ地ビールが再び注目されるようになりました。

しかし当時、「地ビール=おいしくない」というイメージはまだまだ根強いものでした。そこで、悪いイメージを払拭するために多くの醸造家が行ったのが、呼び名を「クラフトビール」に変えて売り出すこと。その流れは全国に広がり、現在クラフトビールは日本に広く浸透しています。

初心者におすすめの基本の選び方

「クラフトビールに興味はあるけれど、どう選べばよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。そんな方は、まず「スタイル」「製造方法」のどちらかから、自分に合ったものを選んでみるとよいでしょう。

代表的なスタイルから選ぶ

クラフトビールの種類は「スタイル」と呼ばれ、その数はなんと150以上にのぼります。ここでは、まず知っておくべき代表的な8種類のスタイルを紹介します。

ピルスナー日本の大手ビールメーカーで販売されるビールのほとんどはこのスタイルです。美しい黄金色の見た目と、喉ごしのよいシャープな味わいが特徴です。軽めの飲み口で初心者にもおすすめのスタイルになります。
ペールエール少し濃いめの琥珀色の見た目と、コク深くフルーティで華やかな香りが特徴です。原材料のホップやモルトの強い香りが感じられます。
IPA(アイピーエー)インディア・ペールエールの略称で、ペールエールにホップを大量に投入して造られます。パンチのある苦みが特徴で、ホップ本来の香りを楽しみたい人におすすめです。
ベルジャンホワイトベルギー発祥の白ビールの一種です。原材料には小麦の他に、オレンジピールやコリアンダーなどのハーブが使用されています。フルーティな華やかさの中にもスパイシーさを兼ね備えた味わいです。
フルーツビールベルビーの伝統的なビールで、原料にフルーツが使用されています。その名の通り、果実の甘味や酸味などが感じられます。
バーレワインワインのように樽で造られるビールで、約半年~数年をかけてじっくり熟成されます。「麦のワイン」という意味を持ち、アルコール度数が高くスパイシーさが特徴のビールです。
シュヴァルツドイツで生まれた黒ビールの一種で、チョコレートやアーモンドのような甘い香りが特徴です。濃い色味の見た目に反して、コク・甘み・苦みは控えめ。あっさりした飲み口で初心者でも挑戦しやすいビールです。
スタウト黒ビールの一種で、原料の一部にローストした麦芽が使われています。コーヒーやナッツのような豊潤な香りと、独特の苦みが特徴です。

製造方法で選ぶ

製造方法は大きく「ラガー」と「エール」の2つにわけられます。それぞれに発酵方法や熟成期間などが異なり、どちらを採用するかでビールの味わいや香りなどが変わってきます。

ラガービール

すっきりキレのあるドライな味わいを楽しみたいなら、ラガービールがおすすめ。「下面発酵」と呼ばれる発酵方法で、6〜15度程度の低温で7〜10日かけてじっくりと発酵させます。熟成期間は約1か月ほどです。

雑菌が繁殖するリスクが低く品質を保ちやすいことから、大手ビールメーカーでよく採用されている製造方法です。クラフトビールでは「ピルスナー」「シュヴァルツ」などがあげられます。

エールビール

ビール本来の香りを楽しみたい人にはエールビールがおすすめ。「上面発酵」と呼ばれる発酵方法で、20度程度の環境で3〜5日ほどかけて発酵させます。熟成期間は約2週間ほどで、ラガービールに比べて短めなのが特徴です。

高温環境で発酵させるため、雑菌が繁殖しやすく大量生産は難しいですが、管理方法や原材料によってさまざまな香りのビールを製造できます。クラフトビールでは「ペールエール」「IPA」「スタウト」「バーレイワイン」「ベルジャンホワイト」などさまざまな種類があげられます。

ラガービールエールビール
味の違いキレがありのどごしすっきり香りが強く味わいが深い
発酵温度6~7度20度
発酵期間7~10日3~5日
熟成期間約1か月約2週間
スタイルピルスナー、シュヴァルツなどペールエール、IPA、スタウト、バーレワイン、ベルジャンホワイトなど

まずはこれから!お手軽に買えるクラフトビール

一昔前は専門店でしか手に入らなかったクラフトビールですが、最近ではコンビニやスーパーでの取り扱いも増えてきました。ここからは初心者でも挑戦しやすい、手軽に購入できるクラフトビールをご紹介します。

①ヤッホーブルーイング「よなよなエール」
ヤッホーブルーイングは1997年に軽井沢で生まれたクラフトビール醸造所です。「よなよなエール」「水曜日のネコ」「インドの青鬼」などユニークなネーミングと個性的な味わいのクラフトビールを数多く世に送り出しています。全国のコンビニやスーパーに広く流通しており、日本のクラフトビールの代表格と言えます。

「よなよなエール」はモルトの甘味と柑橘系の爽やかな香りが特徴のペールエールスタイル。クラフトビール初心者でも挑戦しやすい癖のない味わいです。
よなよなの里

②エチゴビール「エレガントブロンド」
エチゴビールは日本で初めてクラフトビールを生み出した、新潟県の老舗醸造所です。伝統的なヨーロッパスタイルの定番商品に加え、流行りを取り入れた新たなスタイルのビールにも挑戦し続けており、国内外からその品質の高さを評価されています。

「エレガントブロンド」はやさしい口当たりと、豊かな香り、ほどよい苦みのバランスがとれたエールスタイルのビールです。アロマホップの香り高い味わいとフルーティな香りがどんな料理にもマッチします。
エチゴビール

③COEDO BREWERY「毬花」
COEDO BREWERYは、埼玉・川越に本社を置く、株式会社協同商事のビール事業部門が運営する醸造所です。有機農業事業に取り組んできた技術を活かし、地元の農産物を有効活用したビールが特徴的です。サツマイモを使用したビールなど個性的な商品を世に送り出し、多くのビールファンを虜にしています。

「毬花」はホップを大量に使用して製造されるIPAスタイルのビールです。しっかりとした苦味とホップの香りが楽しめます。少し癖のある個性的なクラフトビールにも挑戦してみたい人におすすめです。
COEDO BREWERY

知っているとビール通になれるかも?上級者向けクラフトビール

記念日や誕生日などに、少し背伸びしてプレミアムな商品を買ってみる。そんな楽しみ方ができるのもクラフトビールの魅力のひとつです。ここからは、特別なシーンや贈り物にぴったりな、本格派のクラフトビールを紹介します。

①Far Yeast Brewing「Far Yeast 東京ホワイト」
山梨県小菅村に本社を構え、山椒・柚子を使ったビールや山梨の素材を使用したビールを製造している醸造所です。地元の素材にこだわったクラフトビールは、国内外で多くの注目を集めています。

「Far Yeast 東京ホワイト」は、フルーティで爽やかなホップの香りが楽しめるセゾンスタイルのビールです。白ビールに近い味わいで、比較的軽い口当たりなので、どんな食事にもマッチします。
Far Yeast Brewing

②べアレン醸造所「クラシック」
岩手県盛岡市にあるブルワリーです。本場ヨーロッパの伝統的な醸造技術を取り入れたビール造りに取り組んでいます。

「クラシック」は、ホップの香りや苦みが弱く、マイルドで口当たりの軽い味わいです。コクとキレのバランスがよく、日本で飲まれている定番ビールが好きな方におすすめです。
べアレン醸造所

③うちゅうブルーイング「TREE OF LIFE」
山梨県北杜市にある、「宇宙」というユニークなコンセプトを掲げる醸造所です。農業をルーツに持ち、使用するホップは全て自社で栽培されています。こだわりの製法で少量生産であることから、入手困難な人気のブルワリーとなっています。

フレッシュなホップを使用した「TREE OF LIFE」は、ストロベリーやパッションフルーツの爽やかな清涼感と、すっきりとした後味が楽しめます。うちゅうブルーイングを初めて飲む方に、おすすめしたい1本です。
うちゅうブルーイング

もっと楽しみが広がるビアフェスの世界

ここまでおすすめのクラフトビールを紹介してきましたが、クラフトビールは味わいだけでなくさまざまな楽しみ方があります。その中でも盛り上がりを見せているのが「ビアフェス」です。ビアフェスとは、日本国内や世界中のクラフトビールが一堂に会するイベントのことを指します。

世界各国には面白いコンセプトを掲げる醸造所が数多く存在します。たとえば、UKスコットランドのクラフトビールメーカー「BREWDOG(ブリュードッグ)」は、音楽の「PUNK」の精神を起点に、固定概念を壊す独創的なクラフトビールを造り出し、多くの若者に支持されています。

ほかにもアートをテーマに掲げラベルにこだわった商品を販売する醸造所や、ランニングクラブを作り、「走り終えた後の一杯を楽しむ」というコンセプトでビールを造る醸造所もあります。各国のクラフトビールを見て回り、造り手の哲学を知ることができるのもビアフェスの醍醐味でしょう。ぜひさまざまなビアフェスに参加して、クラフトビールの幅広さを楽しんでみてください。

2023年ビアフェスカレンダー
https://www.alwayslovebeer.com/category/beer-event/

クラフトビールは、造り手にとっても自由な発想とアイデアを形にできる、一種の表現の場にもなりつつあります。音楽やアートなどを通じて、広がり続けるクラフトビールの世界に足を踏み入れてみませんか?

参考文献

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