「二日酔いで仕事に支障が…」「明日は重要な会議なのに飲み会が…」。こんな悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。でも、正しい飲み方を知っていれば、翌日の体調を崩すことなくお酒を楽しむことができます。
多くの人々の頭を悩ます「二日酔い」ですが、実は科学的な予防法があります。なぜ人は二日酔いになるのか。どうすれば防げるのか。失敗しないお酒の飲み方について、新緑糖尿病内科クリニックの佐藤先生に詳しく伺いました。
新緑糖尿病内科クリニック 佐藤雄紀先生
信州大学医学部卒業後、長野赤十字病院や慶應義塾大学病院などで幅広い診療経験を積み、現在は新緑糖尿病内科クリニックの院長を務める。内科、糖尿病内科、内分泌内科を専門とし、日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を持つ。糖尿病診療を中心に患者の健康管理に尽力している。
お酒を飲むと体内でどのような反応が起きているのでしょうか。私たちの体は、アルコールを無害な物質に変えるため、2段階の分解プロセスを行います。まず、体内に入ったアルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。アセトアルデヒドは強い毒性を持ち、二日酔いの原因とされています。
肝臓は通常、このアセトアルデヒドを更に無害な酢酸に分解していきますが、一度に大量のお酒を飲んだり、短時間で立て続けに飲んだりすると、肝臓の処理が追いつかなくなります。その結果、体内にアセトアルデヒドが急激に蓄積され、吐き気や頭痛、めまいといった二日酔いの症状が現れやすくなるのです。
佐藤先生によると、特に以下の4つの飲酒パターンが二日酔いのリスクを高めるとのことです。順番に見ていきましょう。
空の胃に入ったアルコールは急速に吸収され、一気に血中アルコール濃度を上昇させてしまいます。また、アルコール自体にもカロリーが含まれているため、空腹状態の体はそのカロリーを必要以上に吸収してしまい、アルコールの影響をより強く受けることになります。
睡眠不足の状態では肝臓の解毒能力が低下し、乳酸などの不純物の処理で手一杯になります。その結果、アルコールの分解が追いつかず、二日酔いを引き起こすリスクが高まります。
飲酒前のカフェイン摂取も実は危険です。カフェインには脳を興奮させる作用があり、アルコールには脳を鈍らせる作用があります。この相反する作用により「偽物のシラフ状態」が作られ、自分の酔いの程度を正確に判断できず飲み過ぎてしまう恐れがあります。
体がアルコールを分解するには時間がかかるため、短時間で大量に飲むと肝臓の処理能力を超え、体内にアルコールが蓄積されます。その結果、吐き気や頭痛などの症状が現れ、最悪の場合、急性アルコール中毒を引き起こす危険性があります。
飲酒前の準備で最も重要なことは、空腹状態を作らないことです。事前に栄養バランスの良い食事を取ることで、その後のアルコールの吸収速度を緩やかにできます。
【おススメの食事内容】
佐藤先生:
特に枝豆は、タンパク質が豊富で食物繊維も含む理想的な食材です。おつまみとしてだけでなく、飲酒前の食事としても効果的ですよ。タンパク質や炭水化物などを中心に、バランスよく摂取することで、アルコールの吸収を抑えられます。また、アルコールの分解には多くの水分が使われるため、スープや水などで水分を補給しておくことも重要です。
お酒を楽しむ前の準備として、サプリメントの活用も効果的です。ドラッグストアで気軽に購入できるため、常備しておくと安心です。
佐藤先生:
特に五苓散は飲酒前に服用することで、体内の水分バランスを整え、翌日の体調不良を最小限に抑えることができます。ウコンやビタミンB群も、肝臓の負担を軽減し、アルコール代謝をサポートする重要な成分です。ただし、体調や持病によって合わない場合もあるため、気になる方は医師に相談することをおススメします。
「酒は飲んでも呑まれるな」という言葉があるように、自分のペースを守ることが何より重要です。たとえばお酒を1杯飲んだら10〜30分間隔を空けるなど、自分なりのルールを作っておくことが大切です。お酒の適正量は個人によりさまざまですが、厚生労働省の定める「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」をひとつの指針にするとよいでしょう。
【生活習慣病のリスク高める飲酒量】
お酒を飲む際は「1杯のお酒に1杯の水」という対策がよく知られていますが、飲酒中の脱水対策としては、ポカリスエットの活用もおススメです。
アルコールの分解には大量の水分が必要で、さらに利尿作用によって体内の水分やミネラルが失われやすくなります。この点で、ポカリスエットは水分とミネラルを同時に補給でき、体の水分バランスを整える助けになります。
一方で、「飲酒中にスポーツドリンクを飲むと酔いが回りやすい」という説もありますが、大塚製薬の公式ホームページでは、ポカリスエットが脱水対策に役立つ可能性があると説明されています(※)。飲酒中や飲酒後にうまく活用することで、翌日の体調管理に役立つと言えるでしょう。
※ 大塚製薬公式ホームページ:https://pocarisweat.jp/scene/liquor/
アルコールによる体調への影響を和らげるには、おつまみ選びもポイントのひとつです。食べ合わせを少し工夫するだけで、二日酔いを抑える効果が期待できます。
【おススメのおつまみ】
佐藤先生:
アルコールを代謝する過程では、実はたくさんのビタミンが必要になります。トマトやドライフルーツなどに含まれるビタミンやミネラルは、その代謝をサポートしてくれます。また、カカオは食物繊維を含むので、適度な量であれば理想的なおつまみになるでしょう。ただし、砂糖が多いチョコレートは血糖値の急上昇と低下を招き、体調不良の原因になります。カカオ70%以上のダークチョコレートなら、糖分を抑えつつ、アルコール代謝を助けるポリフェノールも摂取できるためおススメです。
【避けるべき食べ物】
佐藤先生:
甘い食べ物は血糖値を急上昇させ、そこにアルコールが加わると逆に急激な血糖値の低下を引き起こし、めまいなどの体調不良の原因となります。また、脂質の多い食事は消化に時間がかかるため、肝臓に余計な負担をかけることにもなります。本来アルコールの分解に使うべき肝臓の働きが分散され、結果として二日酔いのリスクが高まってしまうのです。
飲酒中に「顔の紅潮」「頭痛」「胃のむかつき」などの症状が出たことはありませんか?これらの症状は二日酔いの原因である「アセトアルデヒド」が体内に蓄積しているサインです。このような症状を感じたら、飲酒のペースを落とすか、飲むのを控えめにしましょう。
さらに要注意なのは「アレルギー反応」の可能性を示すサインです。以下のような症状が出た場合は、アナフィラキシーショックの可能性もあるため、ただちに医療機関を受診してください。
佐藤先生:
お酒には、アルコールだけでなく、ワインの亜硝酸など、さまざまな成分が含まれています。これらによってアレルギー反応が起きることもあり、特に突然の呼吸困難や意識障害は危険なサインです。このような症状が出たら、様子見は禁物です。すぐに救急車を呼ぶなどの対応が必要になります。
飲んだ後はできる限り早めの対策が重要です。アルコールの代謝を助け、胃腸の調子を整えるのに効果的な商品は、コンビニやドラッグストアで手軽に入手できます。症状に合わせて選びましょう。
対策品 | 症状 | 効果 |
---|---|---|
ポカリスエット | 喉の渇き、だるさ | ミネラル補給による水分バランスの回復 |
梅干し | 疲労感、だるさ | クエン酸による疲労回復 |
ヨーグルト | 胃の不快感、むかつき | 胃腸の調子を整える |
五苓散(ごれいさん) | 頭痛、むくみ | 水分バランスの調整、頭痛予防 |
ロキソニン※翌朝の服用がおススメ | 頭痛、体の痛み | 炎症の緩和、頭痛の軽減 |
佐藤先生:
意外かもしれませんが、梅干しやヨーグルトは非常に役立つ食べ物です。梅干しに含まれるクエン酸には疲労回復の効果があり、ヨーグルトはお酒で荒れた胃腸を整えてくれます。また、頭痛が気になる場合は、まず体を休めるのが一番です。それでも症状が続くようであれば、翌朝にロキソニンを服用する選択肢もあります。これらの対策品を上手に活用することで、翌日の体調管理がしやすくなります。
飲酒後は以下の行動が危険を招く可能性があります。体調管理のためにも避けるようにしましょう。
血管が拡張している状態でお風呂に入ると、血圧の急激な変動が起き、ヒートショックのリスクが高まります。特に寒い季節は要注意です。気を失ってしまう危険もあるため、シャワーは翌朝まで待ちましょう。
飲酒により血圧の変動が大きくなりやすい状態のため、激しい運動は心臓に過度な負担をかけてしまいます。不整脈などを引き起こす可能性もあるため、運動は控えめにしましょう。
お酒を飲む機会は仕事でもプライベートでもつきもの。どうせ飲むのなら、医学的な対策を知り、翌日に影響を残さない飲み方を覚えておきたいですね。飲み会を楽しみつつ、翌日を快適に迎える準備をしておきましょう。
【重要ポイント】
事業再構築