岩瀬酒造会⾧:庄野様/杜氏:佐々木様
千葉県御宿に位置する岩瀬酒造は、300 年の歴史を誇る老舗酒蔵です。伝統を守りながら現代の視点を取り入れた酒造りを続け、庄野会⾧のもと、新たな挑戦と革新に向けた歩みを進めています。
「千葉県のお酒はかつて多くの方に親しまれていましたが、現在では手に取られる機会が減っています。岩瀬酒造だけでなく、千葉県全体のお酒の魅力を広め、より多くの方に味わっていただきたいと考えています。」
そう語るのは、岩瀬酒造の庄野会⾧。千葉県には約40 の酒蔵があるものの、全国的に知られる銘柄はまだ多くありません。たとえば、「山口県には『獺祭』をはじめ、多くの有名な酒蔵があり、『山口の酒を飲んでみよう』と思われやすい一方、千葉のお酒は全国的な認知度が低いのが現状です。しかし、千葉のお酒の美味しさをもっと多くの方に届けるために、私たちはこれからも全力で挑戦し、千葉のお酒の新たな魅力を発信していきたいと強く思っています。」
庄野会長の強い想いは、岩瀬酒造の300年の伝統に新たな風を吹き込んでいます。
岩瀬酒造を象徴するのは超硬水仕込みのお酒。現在ではその独自性が大いに注目されてますが、かつては、「時代に合わない」として脚光を浴びることが少ない時期もありました。「硬水仕込みは岩瀬酒造の最大の特徴です。これからはこの魅力をもっと前面に押し出していきたい」と庄野会長は語ります。
「近年、日本酒を海外で造る動きが活発になっています。海外では硬水が多いため、そこで仕込まれる日本酒は自然と硬水が使われているのです。」とも語ります。
硬水仕込みを300年にわたり続けてきた岩瀬酒造にとって、これは他にはない強みであり、誇りでもあります。「日本国内で硬水仕込みを続けている私たちだからこそ、この伝統を守りながら進化させていく責任があります。300年の歴史と硬水を背景に、次の300年も選ばれる酒蔵を目指しています。」
硬水ならではの複雑で力強い味わいを持つ日本酒を未来へと繋ぐため、岩瀬酒造は歩みを止めることなく、次世代を見据えた酒造りを続けています。
硬水仕込みの酒造りは、その魅力を生む一方で、いくつもの課題を伴います。特に特性上、発酵が進みやすく酸味が強く出るため、発酵の進行を細かく管理しなければなりません。味わいのバランスを見極めるには職人の技が欠かせません。
さらに、千葉県の温暖な気候は硬水仕込みにとって大きな挑戦となっています。気温が高いことも発酵が加速しやすい要素。温度管理がより一層重要になります。庄野会長は、「気候と硬水という条件の中で、独自の味わいを生み出すための工夫を重ねています」と語ります。
味わいの点でも、硬水特有の苦味が一部の市場ではネガティブに捉えられることがありますが、岩瀬酒造ではこれを逆に個性として磨き上げています。「万人に好かれる酒ではないかもしれませんが、この味に価値を見出してくださる方がいる。その方々の期待に応える酒造りが私たちの使命です。」と庄野会長は言います。
硬水仕込みの最大の魅力は、酸味と苦味が生み出す力強い個性にあります。「この酸味と苦味は、現在の日本酒市場では必ずしも好意的に受け止められる要素ではありません。しかし、これこそが岩瀬酒造の酒をユニークで特別な存在にしているのです」と庄野会長。
実際、展示会で試飲したお客様からは、「こんな日本酒を待っていた!」という熱い支持の声がある一方で、驚きや戸惑いを見せる方もいました。それでも庄野会長は、この挑戦を続ける意義を強調します。「硬水仕込みの酒は、飲む人に新たな驚きと発見を提供する一杯。こうした独自性を大切にしながら、私たちはこれからも挑戦を続けます。」
岩瀬酒造のお酒は、飲む人に新たな驚きと発見を提供する一杯です。伝統を守りつつ革新を続ける岩瀬酒造の姿勢が、この唯一無二の味わいを支えています。その挑戦と情熱が、岩瀬酒造の酒を特別な存在として輝かせているのです。
岩瀬酒造の「I240シリーズ」は、3年前に誕生しました。基盤となった「岩の井 赤ラベルシリーズ」を進化させ、現在では8種類のラインナップを展開しています。このシリーズは、硬水仕込みならではの酸味、米本来の甘味、そしてミネラル感のあるほろ苦さが特徴。流行りのフルーティーな日本酒とは一線を画し、料理と合わせることでその真価を発揮します。
「このお酒は、料理と一緒に楽しむことで新たな味わいが広がる。」と庄野会長。特に濃厚な味付けの肉料理や脂の乗った魚料理との相性が良く、和食だけでなく洋食や中華料理とも抜群のペアリングを見せます。料理との相性を追求し、ただの付け合わせではなく、料理の味を引き立てる存在。それこそが岩瀬酒造の酒の魅力です。食事とのペアリングを通じて、新たな楽しみ方を提供し続けています。
I240シリーズの中でも五百万石は、岩瀬酒造の超硬水仕込みと無濾過生原酒の製法が生み出す独自の味わいを備えています。その特徴的なキレの良さと奥深い味わいは、濃厚な料理との相性が抜群。特に和食や洋食の濃い味付けの料理と合わせると、その存在感が際立ちます。
さらに、無濾過生原酒ならではのラムネのような発泡感が、飲む人に新鮮な驚きを与えます。取材班が実際に試飲した際には、「しっかりとした酸味とともに、超硬水仕込みの特長が見事に引き立った一杯。岩瀬酒造ならではの個性を最も感じられる味わい」と絶賛しました。
酸味と発泡感が織りなすバランスは、他の蔵や一般的な作り方では味わえない特別な体験を提供します。五百万石は、料理を引き立てるだけでなく、食卓に新たな楽しみをもたらしてくれる一杯です。その中には、岩瀬酒造の伝統と革新がしっかりと息づいています。
岩瀬酒造には、様々な年代の熟成された日本酒が保管されています。古酒造りのきっかけは、昭和20年代に遡ります。当時の千葉醸造研究所の所長が語った「お酒は寝かせた方が美味しい」という言葉から、岩瀬酒造は古酒の道を歩み始めました。
古酒の最大の魅力は、長い熟成期間を経て得られる深みのある味わいと香りにあります。年月が酒に与える影響は計り知れず、新酒では味わえない複雑さや奥行きが楽しめます。特に、時間とともに味わいが変化するため、同じ銘柄であっても熟成期間の違いによって全く異なる表情を見せるのが古酒の面白さです。
古酒には「ヴィンテージ」という特別な価値があります。例えば、1986年の岩瀬酒造の古酒は、その年の風味をそのままボトルに閉じ込めた一本。熟成を経てもなお力強い個性を保ち、まるで「時間を飲む」かような体験を提供してくれます。
古酒の可能性は、ブレンドによっても広がります。異なる年代やタイプの酒を組み合わせることで、単一の酒では生み出せない奥深い味わいが生まれます。岩瀬酒造の「秘蔵古酒20年」はその好例で、香りと味のバランスが見事に整った逸品。
飲み方も多岐にわたり、冷やしてシャープな味わいを楽しむのも良し、ぬる燗で深い香りを引き出すのもまた一興。ワインや洋酒のように特別なシーンでの食事とのペアリングにも最適です。
さらに、「面白い飲み方があるよ」と庄野会長が提案したのは、バニラアイスに古酒をかける楽しみ方です。バニラアイスの甘味と古酒の深い味わいが絶妙にマッチし、高級で贅沢なデザートとして新たな発見をもたらします。
古酒はただの飲み物ではなく、熟成の過程で育まれた蔵の哲学と時間そのものを味わえる、日本酒の新たな楽しみ方を提案してくれる一杯です。
岩瀬酒造は300年の伝統を受け継ぎながら、新たな可能性を探り続けています。「この土地と硬水を活かし、千葉の日本酒をさらに広めていきたい。」と語る庄野会長。
千葉県の酒としての誇りを胸に千葉県から日本、そして世界へ。硬水仕込みと300年の歴史を紡ぐ挑戦は、これからも続いていきます。
岩瀬酒造の酒造りは、伝統を守りながらも新たな可能性を追求する姿勢が際立っています。その一杯には、300年の歴史と現代の革新が息づいています。飲むたびに新しい発見があり、どこか懐かしさも感じる。そんな特別な一杯をぜひ楽しんでみてください。
岩瀬酒造株式会社
代表者:庄野智紀
住所:千葉県夷隅郡御宿町久保1916
公式サイト:https://www.iwanoi.com/index.html
Instagram:https://www.instagram.com/iwanoiofficial/
オンラインショップ:https://iwanoi.base.ec/
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